デジタル化されたデータをアナログ的に読み解き今日のレースに勝てるクルマを造る


「過去のデータの積み上げは、さほど重要ではない」IT を活用する企業で初めて聞いた言葉である。「5年前に造ったクルマなんて今では遅くて使い物にならんのだから、新しい発想で新たなチャレンジを繰り返し、今、この瞬間に集中できないとだめなんです。我々のIT には新しい発想を次々とこなせるスピードが必要です」株式会社童夢取締役開発部長兼童夢カーボンマジック代表取締役社長の奥朋栄は語り始めた。

童夢の歴史は、1965年に林みのる(現代表取締役)が HONDA S600を改造したレーシングカー" カラス" を製作した時まで遡る。それから10年後の1975年、それまでに培ったレーシングカーの開発技術を 活かして、スポーツカーの少量生産メーカー設立を目指し、童夢プロジェクトは開始された。

1978年には童夢としての第1号作品であるスーパースポーツカー"童夢-零" が完成、同年の第48回ジュネーブショーにて発表、東洋の無名のカロッツェリアの名前が世界中に知れわたることになった。

 株式会社 童夢 取締役開発部長
 株式会社 童夢カーボンマジック
 代表取締役社長
 奥 朋栄 氏
その後、正式に株式会社として登記を行った童夢はル・マン24時間レースに挑戦し8年間参戦を続けることになる。この間に、その車輌開発技術力に興味を持った自動車メーカーや関連企業からの業務委託が始まるようになり、当初はモーターショー用モデルの製作が中心だったが、評価が高まるにつけ、デザイン、設計にまで業務が拡大していく。

以降、自動車メーカーとのジョイントによるプロトタイプスポーツカーやGT選手権参戦車輌の開発などの業務を受け持つ傍らで、オリジナルの国産F3000シャシーやプロトタイプF1シャシー、市販用F3シャシーを開発・生産するなど、国内唯一の本格的レーシングカーコンストラクターとしての地位を揺るぎのないものとした。

2000年にはF1コンストラクターの必需品である50%スケールの風洞実験設備「風流舎」を建設。2001年にはカーボンコンポジットの開発製造を行う「童夢カーボンマジック」を設立。そして2005年、すべての童夢関連の施設を滋賀県米原市に集結し、また、タイに「童夢コンポジット・タイランド」を設立。レーシングカーの開発で培ったカーボン・コンポジット製品の開発/生産技術を主力とした新たなる事業を展開している。


AMD Opteron™プロセッサの登場によりIT はひとつの大きな坂を登り切った

          風洞実験設備「風流舎」

1987年には25%、2000年には50%スケールで完成した風洞実験設備は、自社用以外にもJR総合研究所や宇宙航空研究開発機構(JAXA)を含む他の事業者に対して国内7 カ所に納入している。この施設及び計測用ソフトウェア「Wind Tunnel Mania」の自社開発こそが、カーボンコンポジット開発における電子油圧制御技術などの習得に結びつき、童夢の新たなビジネス展開を可能にしたと奥は語る。

「現在ではCAD/CAM では定番と言える、2001年に導入した「CATIA V5」を活用して開発システムを構築し、短期開発と品質の向上に役立てています。レーシングカーの設計に必須の強度解析、流体解析などのシミュレーションから、CAMによる試作、検査、組立にいたるまで総合的に開発をサポートするシステムはIBM IntelliStation® をプラットフォームとして稼動しています。ある年システム構築を手伝って戴いている日本IBM からAMD Opteron™ プロセッサを搭載したIBM IntelliStation® 導入の提案を受け、試しに少し使ってみて驚きました。20年近く数多くのコンピュータ・システムを使用してきましたが、これ程性能の飛躍的向上を体験したことはありませんでした。もちろん性能の向上に到達点というものはありえませんが、AMD Opteron プロセッサの登場はIT の性能がひとつの大きな坂を登り切ったという実感を味あわせてくれました」

F1 の進化の速さについていけるIT

童夢は最初のCADシステムとしてCATIA V4を88年に導入し、90年にCAM、92年にはCAE(製品構造解析)を導入。98年に3次元CADに100%移行した。童夢の特長は、自動車開発を非常に短い期間でおこなうことであり、自動車メーカーの場合1~2 年を要するような作業をその半分以下でこなしている。それを実現させているのが多機能なCADシステムであり、機動性が高い小さな組織で自動車メーカーとほぼ等しい開発機能を誇っている。

テクノロジーの発達によりCAEに加えて、CFD(計算流体力学)も、CADにリンクさせ設計が可能になった為、設計と解析を同じウィンドウの中で扱うことのできるCATIA V5を、2001年4月にIntelliStation上で導入。解析専門オペレーターとのデータの煩雑なやりとりや手間と時間的なロス、設計者と解析者の意図のずれなどの問題が一挙に解決した。

「しかし、これだけのシステムが揃っても、結局は人間がデジタル化されたデータをいかにアナログ的に読み解き、解釈するかが大切なんです。例えばCATIA上で動作する Add onのソフトウェアであるGenesisを活用するとカーボンの組み上げ方を自動的に最適化してくれます。しかし誰がやっても同じ結果が出るためデザイナーの個性は出にくい。他社とは根本的に違う発想が必要なんです。チャレンジしなければレースには勝てない。データに違った味付けができない限り、人より前には行けません」

奥が望むITとは、このようなチャレンジを受け詰めてくれる、大容量データの高速なハンドリングを可能にする高パフォーマンスなシステムである。AMD Opteron™プロセッサ搭載システムの登場は奥の要望に応えられるシステム構築の基となったのである。


CATIA とAMD Opteron™プロセッサの組み合わせで勝つ

CATIA V5導入によりデータ量が爆発的に増加し、システムの大容量化と高速化の必要性が高まった為、それらの要望に応えられるシステム構築の模索が始まった。日本IBM からAMD Opteron™プロセッサを搭載したIBM IntelliStation® の提案を受けた時には、従来のシステムとのパフォーマンスの差の大きさとその価格に驚き、AMD Opteron プロセッサを搭載したIBM IntelliStation® の大々的な導入が決定された。

       (AMDはDOMEの“テクノロジーパートナー”です。)

AMD Opteron プロセッサ搭載システムの導入により64bit のCADに対応出来た為、システムが4GBのメモリ容量制限から解放され32ビット上で大規模なアセンブリ・データを扱う際に生じたデータ処理が不要になり、完全なアセンブリ・データ全体の読み込みが可能になった。また従来はコンポーネント毎に何度も繰り返さなければならなかったシミュレーションが完全な製品データのまま行うことが可能になった為、大規模なCADモデルを容易に扱えるようになり、業務全体が非常に効率化した。そして流体・構造等の解析においても、大規模モデルの解析が容易になり、飛躍的に高速に行えるようになった。この結果、システムのパフォーマンスが飛躍的に向上し、設計と解析の連携がスムーズに行えるようになり、製造工程まで含めたサイクルがシームレスに行えるようになった。

AMD Opteron プロセッサ搭載システム上で設計されたレーシングカーが今年も世界中のサーキットを駆けめぐる。

 

株式会社 童夢
設立: 1978年 事業内容:
資本金: 2,000万円 レーシングカーの設計・製造、レース活動、モーターショーカー、コンセプトカー、試作車の受託開発。
関連会社: 童夢カーボンマジック、童夢コンポジットタイランド
従業員数: 50名
所在地: 滋賀県米原市三吉215-1
URL: http://www.dome.co.jp

 

 


 
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